会長法話

中村 晃和 前会長 第18話

「人生にとって最も大切なこと」

 頓智が働くことで名高い一休さんは、室町時代中期、臨済宗の僧で後小松天皇の御落胤(ごらくいん)といわれている。いろんな逸話が残されている中に次のような話が伝わっています。
 ある大店(おおだな)の主人が亡くなられ、皆が誰に枕経を勤めていただこうかと相談した結果、世間に名高い一休さんにお願いしようということで、一休禅師がお詣りにこられました。まわりに居る者は、どのような有り難い枕経をつとめてくださるのかと、かたずをのんで見ていると、一休禅師はやにわに番頭さんに金槌(かなづち)を持ってくるように命じました。皆は不思議に思っていると一休禅師はあろうことか亡くなられた大店の主人の頭をその金槌でコンコンと叩かれたではありませんか。その光景を見た皆は呆気(あっけ)にとられて、一休さんともあろう方がなんてことなさるのですかと、怒りの様子を表わすと 「皆の者、聞きなされ、こうなってからでは遅いのです。仏法は元気なときに聞き、行じなければなりません」と申されたそうです。
  千人の末期の患者を診取られた緩和医療の専門医 大津秀一先生は、「死ぬとき後悔すること二十五」という本の中で、大方の患者さんは死ぬ前に「先生死んだらどうなるのですか。」と尋ねられるそうです。もうそのときには遅いのです。若く元気な時から、この人生の大問題を解決するため心を起こさねばなりません。これを生死(しょうじ)の一大事と言うのです。その解決こそが仏法にあるのです。
 是非、共々にお念仏に励ましていただきましょう。

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