会長法話
老いを生きる これからの生き方
「日常生活をお念佛でつらぬいていく」
人類は常に病気や飢えにと闘ってきました。
今から二千数百年前のローマ帝国時代の平均寿命は二十五歳でした。これが今から百年前やっと平均寿命は四十歳になりました。二十五歳から四十歳、すなわち十五年寿命をのばすのに二千年かかったのです。
それが、今日の日本やアメリカの平均寿命は八十歳になりました。わずか百年で四十歳ものびたのです。急激な寿命の伸びであります。
寿命が延びることは嬉しいことですが、反面かつて経験しなかったさまざまな問題に直面している現在社会であります。昔からあった家族制度の崩壊とともに核家族化が進み、その結果老人夫婦だけの生活、あるいは、一人住まいの方も増えてまいりました。
健康で自分のことは自分でできる間はよいのですが、一人住まいで病気などが加われば心細さ、寂しさ、不安はその当人にしかわからない辛さであります。
誰にもみとれず、一人で寂しく亡くなっていかれる独居老人のことがテレビなどで映し出されます。哀れを誘われます。
しかし、一方どんな優しい家族に恵まれたとしても、やはり老いの苦しみ、病の苦しみは誰にも変わってもらえず、やはり死ぬときは孤独であります。
「孤独死というけれど死ぬときゃ皆ひとり」という川柳がありました。 それでは私達はどのような人生を歩めばいいのでしょうか。その答えは法然上人のご生涯がお手本としてお示しくださっています。
老・病・死のつらさ、悲しみ、不安を超えさせてくださるのは、お念佛を申し阿弥陀如来様の大慈悲をいただくことにつきると教えて下さっています。
どんな状況下にあってもお念佛を離さないようにする。日常の生活をお念佛を申すことでつらぬいていくことが大切であるとお示しくださっているのです。
「ひとりいて、ひとりは住まぬ賑やかさ、慈悲のみ親(阿弥陀様)と、ともに住む身は」と田中木又上人はお詠になっておられます。このお歌は実際ご自身の宗教体験の深まりから事実を詠まれたお歌であります。
いつもいつも自分のそばには阿弥陀様が寄添って下さっているという思いがいただけるようお念佛を申さねばなりません。
結局、最後私達の拠りどころは南無阿弥陀佛のお念佛であります。
最後に素晴らしいお歌を二首紹介させていただきます。
「大いなる浄き光にてらされてのこる旅路ぞはるか輝く」
「一人来て二人帰るぞうれしけれ南無阿弥陀佛をみちづれにし」
合掌