今月の法話

令和5年3月

「小林一茶の悲しみ」

 江戸時代の俳人小林一茶は、年をとってから授かった娘を、わずか2才で天然痘ウイルスで亡くしました。娘を亡くした時、一茶はこんな俳句を詠んでいます。

 つゆの世は つゆの世ながら さりながら

 人の命を、すぐに消えて無くなるはかない朝露に例えています。人の命は朝露のようだ。それはわかっているけれど、それはよくわかっているのだけれど、そんなことは受け入れることができない。これほど悲しいことがあるのかと嘆き悲しんでいます。その時の気持ちをありのまま詠んでいます。

 大切な自分の娘をなくした一茶は命のはかなさを感じました。人生は自分の力ではどうにもならないことをさとりました。その年の暮れにこんな俳句を残しています。

 ともかくも あなた任せの 年の暮れ

 あなた任せというのは、亡くなった娘や自分自身をお救いくださる阿弥陀様にすべてお任せしますという意味です。小林一茶は、とにもかくにもすべてを阿弥陀様にお任せして、おすがりして生きていこうと心に誓ったのでした。

 阿弥陀様は念仏を称えるすべての人を極楽へ導いてくださいます。 皆さんも、阿弥陀様を頼りとして、お念仏を称えながら過ごしていただきたいと思います。

合掌

兵庫 天乳寺
渡邉一弘

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