今月の法話
令和3年11月
求道心
秋のお彼岸が過ぎても真夏のような暑い日が続き、「暑さ寒さも彼岸まで」と季節感を表す常套句も通用しなくなりつつあると思い始めたころ、真鍋淑郎氏が今年のノーベル物理学賞を受賞しました。真鍋氏は地球上の大気と海を物理法則でシミレーションして、既に今から50年前に、地球温暖化とそれに伴う気候変動に警鐘を鳴らしていました。氏は頭脳明晰であると同時に、90歳の現在に至るまで「好奇心」を持ち続け大切にしているそうです。我々凡人は年を重ねるにつれ、飽き易く、諦めることが増えるばかりです。見習いたいものです。
宗祖法然上人は、15歳の時比叡山に登られ学問の道に進まれました。文殊菩薩に譬えられる程頭がよく、比叡山では「智慧第一の法然房」と周りからは呼ばれましたが、自らは学べば学ぶほど自分の力が及ばないと「三学非器」を自覚されました。『三学の外に我が心に相応する法門ありや、我が身に堪えたる修行やある』と嘆き悲しみ経蔵に入りただひたすら聖教にむかわれた法然上人。
万民救済の道を求め続け、遂には凡夫である私たちのために、阿弥陀様の平等の慈悲四十八願に思いを寄せられました。 善導大師の『観経疏』に出会われた喜びは『順彼仏願故の文、深く魂に染み、心に留めたるなり』に表れ、上人の「求道心」は浄土宗開宗へと向かいます。
静岡 報土寺
戸﨑博隆