今月の法話

令和5年11月

人生の本業

 大谷翔平選手がメジャーリーグでホームラン王を獲得されました。怪我で戦線を離脱しながらの獲得、本当にすごい若者です。ピッチャーとバッター両方で世界トップレベルの二刀流。それのみならず顔も二枚目、また性格も良しときてます。人気が出て当然といえば当然でしょうけれど、皆が彼に惹きつけられる本当の魅力は、野球と真剣に向きあっているその清潔な純粋な姿勢にではないでしょうか。

 去年のシーズンオフに彼が日本に三ヶ月一時帰国した際、外に出かけて夕食を食べたのはたったの四日だけだったそうです。あれだけの立場になれば恐らくいろんな方面からたくさんのお誘いがあることは間違いないでしょう。また使い切れない程のお金をお持ちであることも間違いない。夜な夜な繁華街にでかけて飲み歩くということもしようと思えばできるはずです。しかしそのようなことには全く興味を示されないのです。いろんな誘惑があるであろう中、それらには全く興味を示されず、自分の本業である野球としっかり向き合ってらっしゃる姿に彼の本当の魅力があるのだと感じます。

 南無阿弥陀仏のお念仏の教えをお説きくださった法然上人は常々、念仏を申すことを人生の本業として生きていきなさいとお示しくださいました。

 唐突にそう言われるとそんな大げさなと思われるかもしれませんが、決して大げさなことではありません。この世に生まれてきた私たちは必ず命終えていかなければいけない存在です。他人にそのようなことを指摘されるとつい「そんなこと言われなくてもわかっているよ」と言い返したくなりますが、それをわかったように日々生活できておるかと言われると怪しいお互いではないでしょうか。この世に生まれた私達が命を終えていかなければいけない。これ以上大きな問題はないのではないでしょうか。

 南無阿弥陀仏と念仏申すものを阿弥陀様は必ず命終わった後、西方極楽浄土という素晴らしい仏様の世界へと救ってくださる。これがお念仏の教えです。                      

 誘惑に負けそうなたくさんの情報が氾濫するこの現代でありますが、人生の本業であるお念仏、これからも忘れずに励んでまいりましょう。

奈良 永福寺
坊城慶史

バックナンバーを見る