今月の法話
平成20年5月
末代悪世の中で生きる
新緑のまぶしい、一年中で一番気持のいい季節を迎えています。自然や気候はこれほどまでにわたし達に爽快感を与えてくれますが、一方現実生活は、通り魔による無差別殺人や親殺し、子殺しなど目を覆いたくなるほどの残虐さや失望惑で覆われています。
法然上人の生きた時代も、源平の争乱に大飢饉と末法の世を正に表していたことだったでしょう。「末代悪世」という言葉がよく使われています。
そんな時代の中、法然上人の弟子になった学僧で明遍という方がいました。その明遍が法然上人にある日、「末代悪世を生きるわたし達のような罪を犯してけがれている凡夫は、どうしたら迷いの世界から離脱出来るか」と質問しました。
法然上人は念仏往生の本願を説きますが、「そんなことはわかっている、念仏しても心乱れる自分はどうしたらいいのか」と再度質問し、法然上人が私もそうだと言うのですが、再度どうすればいいと問いただす明遍に答えて「ただ煎じ詰めると、おおらかに念仏を申すのが第一のごとである」と仰り、明遍も「その言葉が聞きたかった」と感激しています。
共通する世相の時代に生きる我々も、おおらかに念仏して生きてゆきましょう。
東京 戒法寺
長谷川岱潤