今月の法話
令和6年5月
驕慢心は往生を危からしむ
新茶の季節となりました。新茶を頂く時、今年も新茶を頂けると感謝するのか、それとも当たり前に飲むのかは人様々です。
法然上人は、お念仏に際し、「驕慢の心つまり自惚れの心を謹みなさい」と示して下さいました。
人類学者の山極寿一さんは、長年ゴリラの生態を研究されています。山極氏によりますと、サルとゴリラの比較でいいますとサルのお父さんは母親に代わり子供の世話をするそうですが、やがてお父さんが年老い、子供が大人になっても子供はお父さんのお世話はしないそうです。一方ゴリラのお父さんは、やはりお母さんに代わりまたお母さんがいない子供の世話もするそうです。そして子供が成長すると、子供はそのことを憶えていて、今度は年老いたお父さんのお世話をするのだそうです。またサルは人間と目が合うと、襲ってくることがよくあるそうです。一方、ゴリラは人間に近寄ってきて、下から人間の顔を覗き込みます。これはゴリラの人に対する親愛の情を表しているそうです。そして、ゴリラは人間の祖先に近い種でもあります。
人間社会は競争社会で、勝ち負けの世界でもあります。度々人を上から目線で捉えてしまうこともあります。人を敬い、下から崇める心が失われています。自惚れの心も敬いの心も、我々人間に本来存在するものです。自惚れの心を謹み、敬いの心でただひたすらに阿弥陀様へお念仏を申していきたいものです。
合掌
静岡 報土寺
戸﨑博隆