今月の法話
平成18年9月
手まり
御念仏の故郷、総本山知恩院にもようやく、過ごしやすい秋の季節になって参りました。
その秋のお歌として元祖法然上人は、
『あみだぶに 染むる心の色にでは 秋の梢の たぐいならまし』
と歌われ、「御念仏を称えておれば、梢が、自然の恵みによって紅葉するように、私たちの心は、阿弥陀様と心を通わせ、極楽を信じ往生を願い、阿弥陀様の優しい慈悲の心に染まっていくのです」と申されているのです。
私のお参り先のお婆さんが、「娘婿が、良い人で、世話になるのが悪うて、早う迎えに来てもらいたいのです」と言われたのです。
その時に、私は、この方に生きる悦びに気付いて欲しいと思い、「今度は、私はハワイの浄土宗のお寺にお参りするので、紙の手まりを、お寺に奉納して、信者さんにあげたいから作ってね」とお願いしたのです。
そうすると、「和尚さん、一つの折る度に、南無阿弥陀仏と申して作ったよ」と、大きなスーツケースいっぱいに大小合わせて100個位作って頂いたのです。
そして、それをハワイで渡すと、檀信徒の皆様が、日本の心を思い出し喜んでいただいたのでした。
その事を帰国後すぐに報告に行くと「良かった。喜んでもろうて」とお婆さんは、笑顔一杯でありました。
それからは、お婆さんは、生き甲斐を見つけ「死にたいばあさんより代わって、生き生きばあさん」に成られ、小さな子供さんや、ご親戚や近所の人に手まり等を送られ、日々生き生きと暮らされるように成られたのでした。
このように、御念仏を申しておれば、「御仏と その日その日を 暖かに」と、野島無量子上人の句のように、御仏様に生かされている事に気付き、周りの人に優しさや思いやりの心を施せる、暖かい心で日々生き抜く事が出来るのです。
合掌
大阪 法善寺
神田眞晃