今月の法話

平成25年11月

恩返し

山々の木々が色鮮やかに人々の目を楽しませてくれる晩秋の好季となりました。
 浄土宗の総本山知恩院さんも秋の紅葉ライトアップが11月1日~12月1日迄の一ヶ月間開催されます。友禅(ゆうぜん)苑(えん)・国宝三門・つり鐘・阿弥陀堂。この中の友禅(ゆうぜん)苑(えん)という庭園は、友禅染(ゆうぜんぞめ)生みの親「宮崎(みやざき)友禅(ゆうぜん)」生誕300年を記念して造園されたもので、染(そめ)と同じく華麗な絵模様を醸(かも)し出しているので是非1度、拝観して下さい。
 さて、先日この友禅苑のような生誕を記念する素晴らしい行事をお檀家の息子さんから相談を受けました。母が5年生・叔母が1年生の時に、亡くなった祖母が生きていたら100歳になるので、誕生100年のお念仏をもらいたいとの事。以前にも戦死された祖父の誕生100年を勤めていたので、二つ返事でOK!家族の皆さん参列のもと本堂と自宅でお勤めさせて頂きました。
 その後バースデーケーキのサプライズ!!そして叔母の書いた手紙を朗読。
 『お母さん誕生日のお祝いなんて生まれて始めてでしょう。孫がこんな行事をしてくれたのよ。前代未聞だけど本当に良かったね。お母ちゃんも戦争犠牲者です。戦争さえなければ・・・。昔から私は甘えん坊です。今でもお母ちゃんと呼ぶくせが直りません。お母ちゃんは歌が上手だったと聞きました。大切な夫と舞鶴港で別れたきりで苦労したでしょう。歌が好きだった事と舞鶴港に因んで私が代って岸壁の母を歌っているのです。お母ちゃんの事を思い出したくても何も覚えが無くて涙がこぼれます。いくつになっても親は恋しいのね。お母ちゃん、こんなに優しい孫が居てくれて本当に嬉しいね。今日はありがとう』
 お仏壇に手を合わせ静かに聞いていた姉妹の目には涙が止まず。ケーキに灯されたローソクの火を2人で吹き消し、全員で「おばあちゃんおめでとう!!」同称十念と南無阿弥陀仏のお念仏を十遍お称し、皆でケーキを頂きました。こんなに素晴らしい企画を考えたお孫さんは銀行マン。
 「ご先祖も じぇじぇじぇと喜ぶ おもてなし ご恩返しの 時は今でしょ!」 今日の命に感謝。      

合掌

滋賀 西蓮寺
長谷川秀史

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