今月の法話
平成31年4月
桜を思う
桜の開花や満開の知らせが各地から届きます。桜は日本人の心を和ませてくれる季節の贈り物です。先日、車を運転している時、ふと遠くの山に花が咲いているのが見えました。山桜です。山桜はソメイヨシノよりも早く咲き、長く桜を楽しむことが出来ます。明治時代以前は山桜こそ日本を代表する桜であり、日本人の心の拠り所とする花でした。
平家の武将で歌人でもある平経正は
「あわれなり 老木若木も 山ざくら
おくれさきだち 花はのこらじ」
と詠んでいます。
経正はあの敦盛の兄で共に若武者として戦い、一の谷の戦いで最後を遂げました。また経正は琵琶の名手でもあり、琵琶を弾き語り若い自分の命を山桜に喩え無常の世を詠ったと理解できます。
先日あるお檀家のお母様の一周忌法要の後、息子さんとお話ができました。息子さんは「母親の葬儀の時は、私はガンの手術から退院したばかりで、体調もまだ悪く苦しさを堪えての参列でした。
しかし、今日一周忌法要に参加出来たこと、また健康も回復し母への追善のお念仏を共々に称え、そして何より自分の為に南無阿弥陀仏のお念仏を称えることができたことを有難く思います。」としみじみと語られました。
そして最後に、「今年は去年見ることが出来なかった桜をお念仏を称えながら観ることにします。」と嬉しそうに話されました。
合掌
静岡 報土寺
戸﨑博隆