会長法話
中村 晃和 前会長 第32話
根ほど葉広がる
このことわざの意味は「根の広さほど葉は広がる」と言うことです。もっと言えば「根を豊かにするほど葉は広がる」という意味にもなって、このことわざの味わいが増します。「葉が広がっているだけ根も見えない地下で広がっている」とも言えましょう。
根を大切に豊かにすることが大切であることを示しています。「根本(こんぽん)」という字は、その辺の事情をよく表しています。
さて、別に ある古語に「源(みなもと)深からざれば、流れ長ぜず」とも、また「源深からざれば、其の流れ遠からず」とも言われ、其の逆に「源深うして、流れ長ず」とも言います。
私はかって印度に二度、中国に一度仏跡参拝に行きました。そこで対岸が全く見えない海と見まちがうような大河を目にし驚きました。それは水源が深いからです。
先の根とは何か、水源は何かを、人間世界にあてはめてみると、先だたれた両親・祖父母・ご先祖(せんぞ)様だと言えます。
昨今は、長い歴史、続いてきた家族制度が崩壊して家族が一緒に住めない時代になりました。それ故に、両親やご先祖を思う心が薄れてきました。
せめて亡き方のお年忌(法事)のおりは、息子さん夫婦や孫さんも同席しておつとめしていただきたいものです。その機会を通じて自分はご先祖の命を引き継いで生かされていることに心がいくようになります。今ある自分はご先祖様あってこそと感謝の心を持つ時、その人の心は豊かであり、自分は自分の力で生きてきたと自己中心的な考えは、心が貧しいと言えます。
お年忌を迎えては、今ある自分を振り返りみる尊い機会としたいものです。
合掌