今月の法話

令和7年11月

「命の問題に」

 ある檀信徒の方が折に触れ、御教えについて質問をして下さいます。時には慌てて経典を調べ直しながら答える姿もありますが、質問をしていただける事をとても嬉しく思っておりました。

 先日、「いつも旗を振ってくれる」とその方が微笑まれました。私が意味を分からないでいるとすぐに、「だって道を間違えそうな時に、こっちだよって旗を振ってくれるから。お念仏の道で大丈夫って変わらずに伝えてくれるから。」とお話し下さいました。こちらが大切な事を教えていただいた思い出となった次第です。

 昔、紅葉が彩る京都大原の地で、高僧たちのお念仏に関する問いの全てに法然上人はお答えになりました。これは後に大原問答と呼ばれ、問答は一昼夜にわたり行われました。疑問が晴れた高僧方はお念仏を喜び、満堂の会座には「南無阿弥陀仏」と称える声が高らかに響き渡ったと伝わります。

 今も昔も人は皆、自身の知らない事につい疑いの心を持ってしまいます。釈尊一代の法門をよくよくご存知であり、疑問すべてに答えた法然上人のお姿を尊く仰ぐ次第ですが、それと同時に私は、疑問が晴れたその時に、素直に教えを受け止めた方々のお姿にもまた尊さを思うのです。

 知恩院では紅葉に合わせてライトアップがなされ、日々の法話に加えて、美しい情景の中での法話も開催されます。ぜひ教えを受け止める御縁を結んでいただければ幸いです。

 そこには、「どのように生きるべきか」「どこへと往くべきか」、私たちの抱える「命の問い」に対する答えがあります。どれだけ時が流れようとも、変わることなく頼りとなるお念仏のみ教えがあります。

「 阿弥陀仏(あみだぶ)に そむる心の 色にいでば 秋の(こずえ)の たぐひならまし 」

 秋の深まりと共に、この心もまたあたたかい信仰の色に染め、お念仏の道を歩んで参りましょう。

東京 善光寺
宮田恒順

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