会長法話

中村 晃和 前会長 第23話

「国宝とは道心なり」

 この言葉は今からおよそ一二〇〇年前の比叡山天台宗をお開きになられた伝教大師最澄さまのお言葉である。
 何千年前の建築物や古文疏といった国が指定した国宝が宝でなく、真実道を求める心を持った人こそ真の国宝であるとおっしゃっているのです。
 次のような話が残されています。
 かつて比叡山の大伽藍が消失した、それを目の当たりにした一人が、あのような立派なお堂が一朝にして焼けてしまうとはと、無常を感じ菩提心をおこした。すると夢に明神さんがあらわれて「私は今度の火災で大いに得をした。それは比叡山が焼けたために一人の無上菩提の心を発してくれた人間があるからだ。寺は焼けても、又、建てられるが、真面目に無上菩提の心をおこす人間は滅多にできるものではない。比叡山が焼けた位で、できれば儲けものである。」と明神さんがおっしゃったということです。
 私達浄土宗の流れを汲む者にとって道心とは阿弥陀如来の本願を信じ、お念仏を申し極楽浄土を願う者のことであります。
 そのような人を、お釈迦様はお経の中で、人中の白蓮華と褒め讃えておられます。この世において、お念仏を申す方が一人誕生して下さると、極楽浄土にひとつ蓮の華が生まれます。その方が生涯お念仏を申して下さると、お浄土の蓮の華はどんどん成長し、やがてその立派に育った蓮の華が自分を迎えて下さるし、もしお念仏から遠ざかりと怠りますと、せっかくお浄土に生まれた蓮の華は萎んでしまうと説かれています。
   阿弥陀仏と称えるたびに極楽の花はさかえてみごとなりけり
                                   

合掌

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