今月の法話

令和6年9月

「信仰の深まりを求めて」

 黒谷青龍寺は、法然上人が、救いの教えを求めて、長年ご苦労された浄土宗の根本聖地です。今から八五〇年前、ここでお念仏の教えが産声を上げ、ここが起点となり、教えは日本全国、津々浦々へと広まりました。

 今から十二年前、私は、この青龍寺をお守りする青龍寺係として、単身で赴任し、常住しながら、一年間、お給仕をさせて頂きました。

昔からこの比叡山は、「論湿寒貧」と、自然環境の厳しいお山に例えられて来ましたが、それよりも辛かったのが孤独でありました。

山奥のため、電波が届かず何の情報もなく、とにかく音がないのです。静かにしていると、時計の音が聞こえて来ます。いつの間にか、ひとりで何か叫んでいるのです。

 ご飯を食べていると、自分の人生が、走馬灯のように浮かんでは消え、自然に涙が溢れて来ました。私にとって、黒谷青龍寺は、深い反省の時間でもありました。

 この青龍寺で生活して思うことは、八五〇年前、法然上人は、どのような思いで、この報恩蔵にお籠りをされたのか。

開宗八五〇年を迎えた今、私たちが再確認しなければならないのは、法然上人の厳しく、激しいまでの求道の姿ではないのか。

 念仏信仰に終わりなし。常に自らを奮い立たせ、信仰の深まりを求めながら、お念仏の中に、この命をまっとうして往く。この事を法然上人にお誓いする開宗八五〇年でありたいと思います。

滋賀 阿彌陀寺
稗貫光遠

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