今月の法話
あみだ仏に染まる心
山が次第に色づき目を楽しませてくれます。紅葉は昼夜の寒暖の差が大きくなるにつれ進行しいくそうです。寒暖の寒を人生に見つけるなら、思わぬ形での死別に巡り合うことでは無いでしょうか。
テレビでもご活躍の俳人夏井いつきさんが、大切な友人の訃報を受け取られた時、そのショックを「心の複雑骨折」と表現されていらっしゃいました。誰しも自分の力ではどうにも抗え無い出来事に巡り合い、奈落の底に叩き落とされては、日にち薬やなぐさめでなんとか這い上がって立ち直る経験をされてると思います。夏井さんは続けて「心の複雑骨折を繰り返しながら、自然治癒力を身につけていくのが人生というものなのかもしれない」ともおっしゃっています。死別の悲しみをなんとか治癒させながら、人生は紅葉していくのでしょうか。
法然上人は「阿弥陀仏に染むる心の色に出でば秋の梢のたぐいならまし」と詠まれました。私たちは、お亡くなりになった方をどうしようもない悲しみの中で「どうぞお救いください、阿弥陀仏様」と南無阿弥陀仏のお念仏を廻向するしかできません。阿弥陀仏のお約束を頼りに、励みに悲しみを抱えながら生きていくしかないのです。そんな心から滲み出てくる様子を「秋の梢のように美しいものだ」とお詠みになったのです。
そして、自分自身の避けられない死を思う時ですらも「どうぞお救いください、阿弥陀仏様」とお念仏をお唱えします。避けることができない苦しみは、他にも生きる事、老いる事、病の縁に巡り合う事があります。自然の一部として生かされているから仕方がないとは分かっていても、どうしても諦めきれないから湧いてくる苦しみです。 それでも生きていかなければいけない私たちに力を与え、共に歩んで頂けるのが阿弥陀仏様です。今日も私の傍にいてくださいます。
合掌
福井 善導寺
大門哲爾