今月の法話

令和5年4月

これまでも、これからも

 コロナ禍4度目の春となった。コロナ禍当初、野球解説者・評論家、野村克也氏の著書に

「便利は弱い、不便は強い。器用は弱い、不器用は強い」

とありその言葉に目が留まった。最先端科学の時代といわれる現代でも、未知のウイルスへの対処は手洗いうがいが中心となった。便利の弱さとはこのことか。冬の停電で炎の有難さに気づくことを思い出した。古くから残り続けているものが結局は頼りになるのではなかろうか。

 お念仏の元祖、浄土宗の宗祖、法然上人が開かれたみ教えは令和6年に開宗850年を迎える。850年前と現代。環境、文化、言えばきりがないほど違う。けれども法然上人のみ教えは受け継がれ続けている。

 法然上人お示しの念仏信仰が、人々を支え心の拠り所となるからである。どんな時代も人は必ず悩み苦しむ。平均寿命が延びても、別れの悲しみは訪れてしまう。信仰があればこそ、苦しみ悲しみの受け止め方が変わるはずである。

 阿弥陀様におすがりし、助けたまえと念仏すれば、誰もが必ず救われる。自分自身も、大切に思う人も。なんと心強いことか。修業の完成を目指せぬ私たちにとって、念仏者を必ず救って下さる阿弥陀様のお約束は、最も強力で唯一のみ教えである。

 時代がいかに変化しても念仏信仰の灯は力強く人々を支え、必ず心の拠り所となり続ける。「ただ一向に念仏すべし」の仰せを信じ、南無阿弥陀仏と唱え続けよう。お念仏は強い。

合掌

鳥取 光明寺
福田真也

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