今月の法話

令和6年8月

人間の愚かさと弱さ

 理論物理学者のアインシュタインは、この世に無限のものは「宇宙と人間の愚かさ」だと言った。物理学の見地から、宇宙が無限だということは納得できるが、人間の愚かさ迄目を向け、宇宙と同じように無限とは深い洞察である。

 果たして人間とはいかなるものか、突き詰めると無限の愚かさをもった存在であると言い切るところは、人間の本質を見極めた結果であると思われる。

 また、大リーグで活躍したイチロー選手は、6年連続200本安打を打った時の心境を聞かれて「プレッシャーが重かったけれど、開放されました。いつになっても強い自分にはなれない。弱さしか見えてこない」そのように静かに語ったといいます。

 傍から見てイチロー選手に「弱さ」は無縁であり、むしろ強靭な精神力の持ち主だと羨んでしまうのではないでしょうか。しかし、毎年記録達成の重圧の中で自身を見つめ続けた結果、弱さしか見えてこないと素直に話されている。

 時代は異なれども、学問とスポーツの世界でそれぞれの道を追求して名を成した両名から、はからずも出た言葉が「人間の愚かさと弱さ」

 これを我が身に置き換えると、どうでしょうか。両名のように、人間をまたこの「我が身」を深く見つめ、そして素直に受け入れているでしょうか。私共は、ともすれば自分自身の愚かさ弱さには目をそらしがちで、大概認めたがらないものです。

 しかし、この愚かさ弱さ、また罪を重ねなければ生きていけない「我が身の程」をよくよく自覚して、「実に至らない我が身であるなあ」と受け入れていくことが大切であり、そこが信仰の出発点なるのであります。

 そしてこんな愚かで弱く、煩悩だらけの私でも阿弥陀様が救い導き、決してお見捨てにならない。その阿弥陀様に「助け給え」と打ち任せる一心でお念仏を称え続けていくことが、愚かで弱く、知らず知らずに罪を重ねていくこの私達が救われる、唯一絶対の行いなのです。                

                                合掌十念

埼玉 圓福寺
池田常臣

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