今月の法話
令和5年8月
合掌のこころ
八月の夏休みには、知恩院御影堂にも子供たちの元気な声があふれます。
法然上人のみ教えを、夏休みの子どもたちへ伝える行事、
「おてつぎこども奉仕団」が開催されます。
知恩院で二泊三日の生活を通じて、人を思いやる大切さ、自然やみ仏さまを敬い、平和を尊ぶ心を学びます。
人と人とのつながりの大事さを、お念仏の声の中に体感するのです。
毎年、全国から多くの子どもたちが参加します。
私が住職をつとめるお寺で、法要ごとに、父親の回向をなさるお婆さんがおられます。まだ五歳の時、戦争で父親を亡くされたのでした。
仕事柄、出張の多かった父に、仕事へ発つ朝、当時五歳の娘は必ずこう言いました。
「帰ったら、一緒に遊ぼうね」
すると、にっこりと微笑んで、父は出発しました。
ある朝、旅支度をする父へ、同じように声を掛けました。
「帰ったら、一緒に遊ぼうね」
いつもと同じく、出張へ行くのだと思ったのです。
ところが、私に返事をするどころか、振り向きもせず、まるで逃げ出すように、父は駆けていきました。
その朝が、父との最後になりました。
「今、この歳になり、あの時の父の気持ちを思うと涙があふれて、ただ両手が合わさります。私を見守ってくれる父に、お念仏を手向けずには、いられないのです」
おさな子に 合わせてみせる この両手
さあ、まもなくお盆です。み仏やご先祖さまに手を合わす大切さを、平和の尊さを子や孫へ伝えるために、どうぞご一緒に菩提寺のお盆行事へと、さらには法然上人の聖地、総本山知恩院へとお参りください。
京都 大善寺
羽田龍也