今月の法話
令和6年11月
往生浄土とは
法然上人は比叡山でのご修行中に、万人の救済法としてのお念仏のみ教えを見出されて浄土宗をお開きになられました。そのみ教えはお書物による心得であり、そのお念仏のみ教えが正しいのか?本当に今の人たちに相応しているのか?という事を遊蓮房円照という方との事象で確信されたのです。
遊蓮房は善導流の念仏を実践し、念仏三昧において一定の証を得ていたと言われる方で、一族からは生き仏のように尊んだとされておりました。法然上人は比叡山下山後、直ちに遊蓮房の元に赴きました。上人との交流は二、三年の間であったとされます。そして、遊蓮房の命終に臨んで善知識となり、九遍まで念仏を称えた後、「もう一念」と法然上人に勧められ、高声に一念し、安らかにご往生されたとお伝記にございます。
法然上人は「浄土の法門と遊蓮房とに会えるこそ、人界の生を受けたる思い出に侍れ」(『四十八巻伝』44、聖典六・684)と述懐されるように、遊蓮房円照の念仏往生の実際のお姿から受けた感動と念仏往生の確証を得られたのです。
法然上人の最期のお姿は、「念仏申しながら、眠るようなさまで息をお引き取りになられた。声が聞こえなくなってからも、まだ唇や舌をお動かしになることが十余遍も続いた。顔色はとりわけはっきりと美しく、お顔はにっこりと微笑んでおられるように思われた」とお伝記にはございます。
正に遊蓮房円照とのお出会いで得られた確証を、自らのご往生のお姿でお示しになられたと拝察致します。
本年は法然上人が浄土宗をお開きになって850年の記念となる年であります。このご縁を大切に一層の念仏精進され、往生極楽を目指されることを念じます。
合掌
兵庫 常楽寺
浦上博隆