今月の法話
令和5年7月
真の幸せとは
心理学者で京都大学の名誉教授であった河合隼雄氏(一九二八~二〇〇七)は、生前、著書の中で、幸せの条件を二つあげておられます。
①「将来に対して希望がもてる」
➁「自分を超える存在とつながっている、あるいは支えられていると
感じることができる」
この二つの幸せの条件を、浄土宗のみ教えに照らし合わせると、次のようにいえます。①の将来の希望とは極楽往生であり、②の自分を超える存在とは、阿弥陀様やご先祖様であります。つまり、お念仏の信仰の中に、現世において極楽浄土という将来の希望が約束され、阿弥陀様やご先祖様とつながることができるのです。言い換えると、私たちは極楽往生という将来の希望に向かって今を生き、阿弥陀様やご先祖様の見守り、導きの中に今を生きることが、浄土宗が勧める真の幸せといえましょう。
ある日の新聞に、愛媛県の小学校であった卒業式の話が紹介されていました。それは、卒業式の日の最後の学級会での出来事。先生は、「最後の宿題を出します」と言って、卒業生たちが思いもよらない、こんな宿題を出されたそうです。
「幸せになりなさい、それが最後の宿題です。提出期限は生きてい
る間です」。
なんとも素晴らしい宿題ではありませんか。この先生のように阿弥陀様やご先祖様も私たちの幸せを願っておられます。では、私たちが幸せになるためには何をすべきなのか。人生の宿題とは。答えは、南無阿弥陀仏のお念仏です。
ならば、真の幸せへの第一歩は、この口にお念仏をお称えすることからはじまるのです。
滋賀 雲住寺
井野周隆