会長法話
万人が等しく救われていく道
法然上人が浄土宗をお開き下されるまでの仏教は天皇や貴族の方々だけのものであり、国家の繁栄やその人達の幸福と安泰を祈願する仏教でありました。
一般庶民は蚊帳の外におかれていました。
又、特別むつかしい仏道修行を完成した者のみがその佛の国に生まれていくことのできる仏教でした。
それに対して、法然上人はお釈迦様のみ教えの中から学問のあるなし、財のあるなしにかかわらず又むつかしい修行のできない者でも、煩悩のあるがままに阿弥陀佛の本願を信じてお念佛さえ申せば、等しく救われていく道をお示し下さいました。
法然上人のお弟子である親鸞聖人は、「本師源空(法然上人)いまさずば、このたびむなしくすぎなまし」と述懐されています。
受け難い人の身を受けさせていただいた私達も法然上人がお示し下されたお念佛のみ教えに俗することができえたことを喜こばせていただきたいものです。
数年前にハンセン病患者の方々が生活されている愛生園を訪問させていただきました。
そこでハンセン病患者さんに対する、いわれなき厳しい差別の歴史を研修させていただきました。
ハンセン病患者の男性の一人は、その病気がわかると友達はおろか、肉親・家族まで自分を敬遠するようになり、「みんな私を捨てよった!なぜこんなことになったのだろうか!」と自分の運命を歎かれたそうです。そんな時、療養所において、仏法とりわけお念仏のみ教えに出合われました。そこで「私には阿弥陀様がおってくださる。阿弥陀様は私を捨てはなさらん。」という信仰をいただかれ安心されました。そして、「捨てられて、寄るべなき身と思いしに、うれしや弥陀のひろい子となる」と詠まれました。
私達もまた、やがて一人で逝かねばなりません。そんな身をもつ私たちはしっかりしたお念仏信仰を身に付けさせていただかねばなりません。
「ただたのめ、ほとけのみ名をたよりにておのが心をまかせまいらす」
合掌