今月の法話
令和8年11月
秋の深まり信の深まり
自坊のある奈良県吉野郡は自然豊かな土地です。私は紅葉の季節になると吉野の山々を眺めながら、法然上人がお詠みになられた秋の御歌を想い重ねています。
阿弥陀佛に染むる心の色に出でば 秋の梢のたぐいならまし
赤や黄に染まる山々は一朝一夕で色づくのではなく、凍えるように寒い冬、穏やかな春、厳しい夏の暑さを越えて今美しい姿になった。私達の信心も同様に、すぐさま揺らぎのない完全な状態にはなれないけれど、人生の紆余曲折を経験しながら念佛を称え続ける中にだんだんと深まっていくのだ。その教えを秋の紅葉を用い比喩表現としてお示しくださったのが、この御歌です。
私達は目に見えない極楽浄土を疑ってしまう心が、どうしても起こってくるものではないでしょうか?法然上人は「心は散り乱れて迷い疑いの心は起これども、南無阿弥陀佛と口に称えたならば阿弥陀佛の本願力によって必ず極楽浄土へ救われる。」と仰せになっておられます。
私は佛教大学に通っていた頃、ひとつ大きな悩みがありました。それは阿弥陀様を信じ切ることができないまま、完全な信心を持てないままに僧侶になって良いのかと言うことでした。 しかしながらこの秋の御歌を通じて、自分の頼りない信心が深まるためには、生涯をかけて念佛を称え続ける道であることを知り、今日もまた一声一声称える中に救いがあるのだと年々感じております。どうか共々に念佛の中に身を置く人生の先に、極楽往生を遂げさせていただきましょう。
奈良 西迎院
中村祐華

