今月の法話
平成18年10月
法然上人の秋のお歌によせて
紅葉の便りが聞かれるころとなりました。
えも言われぬ見事な紅葉は、私達の目を楽しめ、心に栄養を与えてくれます。
法然上人の秋のお歌に「あみだぶに染むる心の色にいでば 秋の梢のたぐいならまし」
があります。
阿弥陀如来の本願を信じ、お念佛を申し続けるならば、煩悩に満ちたどうにもならないお粗末な心を、阿弥陀如来はお導き下され、秋の木の葉が紅葉するように、私達の心を美しく染めて下さることよ。
というようなお歌でしょうか。
よく人は心の持ち方次第だと言います。
その通りではありますが、果たして自分で自分の心を思うように変えることができるのでしょうか。
タンスの引き出しの中のものなら簡単に入れ替えはできるけれども、自分の心を簡単に入れ替えることができないのが私達の心であります。
自分の心を自由にコントロールできるくらいなら、心の病に悩み苦しむ人はいないことでしょう。
煩悩深くして底ない私達の心を、煩悩あるがままに、救ってお導き下さるのは阿弥陀如来のお慈悲の心によらねばなりません。
そのことを法然上人は秋のお歌にお詠み下さっておられるのです。
終わりに法然上人の尊いお言葉を味わわせていただきましょう。
「妄念・余念をもかえりみず、散乱・不浄をもいわず、ただ口に名号を称えよ。
もしよく称名すれば、佛名の徳として、妄念自らやみ、散乱自ら静まり、三業自ら調って願心自らおこるなり」
合掌
奈良 西迎寺
中村晃和