今月の法話
平成28年3月
再会
お檀家さんのお宅にお伺いすると時々、「先亡の御家族が夢枕に立った」という話をお聞きします。私の母からも何度か遷化(せんげ)した先代住職の父が夢枕に立ったと聞かされました。
善導大師の『発願文』の一文に
「彼の国に到りおわって六神通を得て、十方界にかえって苦の衆生を救摂せん」
と説かれておりますが、これは還相(げんそう)廻向と申しまして、「極楽浄土に往生した人は悟りを得て、この世にまた帰ってきて人々を苦しみから救う」ということです。
夢の中ですが、「自分が遺してきた家族が悩み苦しみ日々を過ごしているのではないか」と案じて夢枕に立って下さったのだと、これも還相廻向のひとつだと私は信じています。 先日のことですが私の夢中にも初めて父が現れました。生前の元気な姿で家族の心配を口にしていましたが私については何も語りませんでした。私が色々と悩んでいた時期でしたが、父は無言で「越えられない壁はない」と伝えたかったのでしょう。生前と変わらぬ父の厳しさに「間違いなく父は極楽浄土から様子を見に来たのだ」と確信しました。
遠い極楽浄土であっても家族の絆は決して途切れない、今も私達のことを見守っているのだと父親の恩愛に感謝をして、墓前でお念仏をお称えさせていただきました。
「 往きし人 縁(えにし)結びし はらからに 疾(と)くかえり来て 済度したまえ 」
お彼岸の中日は太陽の沈む真西に先亡の方々が在します極楽浄土がございます。真西に向かいお念仏をお称えしましょう。
合掌
石川 誓願寺
魚津光彦