今月の法話

令和8年7月

地獄に行きたい⁉

常日頃、私たちはお念仏「南無阿弥陀仏」と称えます。

「南無阿弥陀仏」とは「阿弥陀さま、どうぞお願いします。お任せします。」という意味です。では、阿弥陀さまはどのようなお方でしょうか?

法然上人は「阿弥陀仏と衆生は親子のごとし」とお言葉を残されています。衆生とは生きとし生ける私たちのことです。つまり、阿弥陀さまと私たちは親子のような関係です。私たちにとって阿弥陀さまは親様。阿弥陀さまから見れば私たち一人一人は子ども。親は子どもを命がけで守ります。親には親心があるからです。

この世では阿弥陀さまが私たちを育て、良い方向に導き、いよいよこの世を去るときは極楽にすくい取っていただきます。なぜなら、本家本元の親心、親の願い、本願によるものです。ですから、「南無阿弥陀仏」とお念仏を称えることは最も易しく、最も勝れた修行です。

お檀家様の75歳の男性の伸行さん。毎月、車で一時間かけてご先祖、ご両親のご回向を勤めにお寺に来られます。一緒にご回向をした後、毎回一時間半から二時間ほどお話をするのが楽しみです。

ある時、「私は地獄に行きたい。」と伸行さんが話されました。何故か尋ねると、「南無阿弥陀仏と称えると極楽にすくい取っていただけるのはありがたい。極楽は、苦しみ、悩み、迷い、欲のない世界と聞いている。でも、実際、苦しみ、悩み、迷いがあって初めて極楽のありがたさが分かる。だから一度地獄に行って苦しみを味わってから極楽に行きます。」ということでした。今、私たちが住んでいる世界も、苦しみ、悩み、迷い、欲の世界であることを伝えました。

それでも地獄へ行きたいと言われましたので、

「伸行さんが地獄へ行けるように、阿弥陀さまにお願いしましょう。同称十念。」

南無阿弥陀仏を十遍称え終わった瞬間、二人で顔を見合わせて笑いました。

南無阿弥陀仏を称えたら地獄へ行けません。極楽往生間違いなし。

「これからはお念仏中心の生活をしていきます。」伸行さんの顔が忘れられません。

伊賀 専念寺
宮嵜美政

バックナンバーを見る