今月の法話

平成13年9月

月かげの いたらぬさとは なけれども
ながむる人の こころにぞすむ

今年の高校野球夏の甲子園は日大三高が初優勝を飾り閉会しました。
大阪の上宮高校は野球名門校で甲子園によく出場しますが、試合の時、演奏される上宮高校の校歌が標記の歌詞です。
さてこの歌詞の作者が浄土宗を開かれた法然上人であることをご存知でしたか。
お釈迦さまが今からおよそ二千五百年前に仏教をお説きくださったが、その中でお念仏を唱えると阿弥陀さまにお救いいただけると説かれているお経三巻を根拠に日本でお念仏を最初に広めてくださったのが法然上人であります。
三巻のお経の内、仏説観無量寿経というお経の中に「光明遍照 十方世界 念仏衆生 摂取不捨」(意味は、阿弥陀さまの光明は遍く十方の世界を照し、念仏の衆生を摂取して捨てたまわず)のご文があります。
法然上人はこのご文の阿弥陀さまの光明を「月の光」という私たちが見ることの出来るものに置き換えて、分かりやすいお歌にしてくださったのです。
「阿弥陀さまの光明(衆生を御手の内におさめとり護り念じてくださるご利益)は月の光の様に全ての人々に公平に注がれているが、月をながめる人、即ち阿弥陀さまを信じ、お念仏申す人だけがこのご利益を蒙ることが出来る。」との意味です。
この光明による救済とは、人が死んだ時に阿弥陀さまに極楽浄土へ連れて行っていただけることだけを指すのではなく、この世でも念仏申している人は阿弥陀さまの光明に照らされて護られていることを指すのです。
私は自分の人生を振り返るに数多の阿弥陀さまのお護りを痛感しております。
特に私の一命をお救いいただいたことは生涯忘れることが出来ません。
子供の時自転車に乗り大型ダンプカーと正面衝突した時のことです。
自転車の前輪は曲がりくねり、三角フレームは折れ曲がってしまうという事故です。
今日の様な虚弱なフレームでなく頑強なものでこの様な衝撃のもと、物理的に考えれば私は頭部よりダンプカーのボンネットに激突し一命を失うと予想できるのですが、実際にはどこにも当たることなく弾き飛ばされ怪我は指先一ヶ所を擦剥いただけでした。
正に御手の内におさめとりくださったお陰です。
今流に言うならば阿弥陀さまのエアーバックのお陰です。
当時は不思議と思っていたが今では阿弥陀さまの光明による不可思議功徳をいただいたと確信しております。
勿論、私は寺の生まれで子供の時から環境の必然から毎日お念仏はお唱えしておりました。
皆様もご自分の過ぎし人生を振り返る時、いまだに自分の常識では説明の出来ない不思議と感じていることはありませんか。
これは阿弥陀さまの不可思議功徳によるものであり、解らないから不思議と思えるのです。
阿弥陀さまのご利益と悟ったなら、お陰さまと感謝してお念仏申さずにおれなくなります。
お念仏を毎日
唱えている内に必ずこの光明を感ずることが出来るようになります。
さあ、今からお念仏の日暮しに入り、心安らかな毎日を。

岐阜 安楽寺
澤玄浄

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