今月の法話
ジューンブライドという言葉の響きへの憧れからなのでしょうか。
梅雨という季節にも関わらず、六月に入ってから結婚式の話しを続けて何度か耳にしました。
西洋では六月に結婚した女性は幸福になれると言われていますが、洋の東西を問わず幸福な結婚は誰もが望むことでしょう。
私は二度ばかり仏式結婚式の誡師をつとめさせて頂いたことがあります。
御本尊の阿弥陀如来像の御前で親族一同の見 守るなか、新郎・新婦の二人で最初に行う共同作業が、阿弥陀様と両家御先祖へのお花のお供えです。
その後、互いの左手首に数珠をかけ合い、指輪ならぬ数珠の交換をした後、阿弥陀様を心の依り所とし、互いを尊重し合い、幸福な家庭を築くことを誓うのです。
結婚式は新郎・新婦の門出を祝う儀式ではありますが、本当は仏様や先祖の御加護のもと、不可思議なる縁によって結ばれた二人が、多くの人の支えに助けられ式が挙げられたことに感謝し、同時に家族・親族の絆が強められていくところに意味があります。
最近は信仰とは全く無関係に外国の教会で、二人だけで簡単にすませるカップルもあるようですが、人は決して一人で生きていくことは出来ません。
家族や社会の中で我慢することを覚えたり、叱られたり誉められたり、泣いたり笑ったりしながら人は人の中で育って初めて人間となっていくものです。
昨今、日常茶飯事のように起こる犯罪の多くも、犯人が結局きちんとした大人に育っていない、もっと言えば人間として成長していないところに原因があるように思います。
便利で快適に楽することばかりに目が向き、兎角煩わしい事や面倒臭い事は省略されがちですがそれは自分の人生をも簡略化し、一人前の人間に成長して行く過程をも削除しているのではないでしょうか。
人間社会に生まれながら人間として成長していけないものが、幸福になれるはずがありません。
幸福な結婚を願い 六月の花嫁を夢見た方が本当に幸福になる為に必要なものは、綺麗な服でも大きな家でも なく、額に汗し、時には涙を流しながらも、周囲の人々に、先祖に、佛様に手を合わせ、感謝出来る心を育てることです。
日々お念佛を申す暮しの中で、真に豊かな実りある人生を歩んで行きましょう。
合掌
山口 大福寺
神田大聖