今月の法話
平成14年11月
紅葉の季節になりました。知恩院の境内の木々もお化粧直しの時期です。
東京で流れているJRのCM「そうだ京都へ行こう」本当にそんな気持ちにさせられます。
夏の間、もえるような緑で私たちの心を和ませてくれていた木々の葉は、秋になると自然と紅葉しさらに私たちの目を楽しませてくれます。
あの美しい色はそれまでどこにしまわれていたのでしょうか。
まるで不思議な力が働き、緑から赤や黄色に染められたように感じられます。
阿弥陀仏に 染むる心の 色に出でては 秋の梢の たくひならまし 元祖大師法然上人のお詠みになった秋のお歌です。
阿弥陀様の本願を深く信じ、お念仏をすれば救いのみ光に包まれます。
そしてこのみ光を受けた人々は必ず仏の心に近づき、人格円満になっていくものなのです。
お念仏を称えることによって阿弥陀様の御功徳が私たちの心に染みとおり、まるで木々の葉が自然と紅葉するように、生活態度にもその功徳があらわれてくるのです。
仏教では「一切衆生 悉有仏性」といってすべての人々に仏になれる要素があると説きます。
しかし、欲望や怒り、愚かさなどの煩悩を持つ私たちは、自分自身でこの仏になれる要素を隠してしまい、日々の生活に追われ、いつも自分中心に物事を考えてしまいがちです。
私の思うままに生きる、すなわち「わがまま」な暮らしをしていないかどうか反省し、お蔭様に感謝することが大切なことなのです。
阿弥陀様を信じ、お念仏を称え続けると、自然に「反省」と「感謝」の大切さが分かるようになり、奥底に自ら隠していた私たちの「仏性」がだんだんと顔を出してきます。
親に育てられてやがて親になるように、仏の子はやがて仏になることができるのです。
東京 念佛院
中野隆英