今月の法話

平成15年4月

仏説阿弥陀経に曰く

又舎利弗、極楽国土には、七重の欄楯、七重の羅網ある七重の行樹あり。
皆是れ、四宝をもって周

囲繞せり。

(意訳)
又舎利弗よ、仏のみ国には、七重のかこいや七重の美しい羅の織物の様な網を掛けた七重の街路樹がある。
これ等皆金・銀・瑠璃・波

の四宝で飾られ、街々にはりめぐらされている

『阿弥陀経』には極楽浄土、即ち仏の国の美しさを言葉をきわめて説いている。
しかし、我々の住んでいるこの世界で見様によっては、阿弥陀如来の国にも比べられる様な美しいしのか沢山にある。
日本の国はすばらしい。
私は世界で一番美しい国だと思っている。
中でも四月の京都は綺麗である。
そして優しく降った春雨の後には、樹々の枝々にも、きれいに咲いた花にもすき通ったダイヤの様な露の珠が宿っている。まさに『阿弥陀経』に説かれたお浄土の様な美しさである。
この様な世に住みながら、今の世界の人の心は何故か荒れすさんで、醜悪な面ばかりをみようとしている。
中近東に於けるイラク問題、世界第二の埋蔵量を誇る産油国でありながら、その豊かさが原因で争いが起る、先のイラク戦争後、ロシア・フランス・中国等はイラクから莫大な石油の権益を得た。
アメリカはそれ等の国を通して大量の石油を買っている。
言葉には出さないが、そんな所にも各国の思いがある。
もしも、ブッシュがフセインに勝てばその利権は一体どうなるのだろう。
大量殺人の兵器の問題の蔭にかくれて種々の思いがある。

北朝鮮の人々は気の毒だと思う。
人口二千萬余の国が百萬の軍隊を維持するだけでも大変なのに、彼の国には石油がない。
かつての日本も石油がなくて、米英を相手に宣戦布告した。
当時の日本は、石油の一滴は血の一滴とまでいった。
ABCDライン、AはアメリカBはブリテン即ち英国、Cはチセイナ、Dはオランダに石油の道をたたれた。
そのことが軍部を暴走せしめる直結の原因となった。
今、北朝鮮が日本のふみあやまった道を行おうとしているのではないか。
世界第二の石油大国のイラクが問題を起し北朝鮮は石油がなくて段々と核の道へ追いやられる。
世の中は皮肉なものだ。
世界中の人達がもっと冷静になってお互の美しいものを見つめ合ってゆくことができないものか。
そして、お互の国を、お互の人の心を、美しいものと見ることが出来たら、此の世は『阿弥陀経』の世界の様になるだろう。
『佛説無量寿経』にはこうあります。
田あれば田を憂ひ、宅あれば宅を憂うー中略ー
田なければ、また、憂ひて田あらんことを欲し、宅なければ亦憂ひて宅あらんことを欲す。

京都 阿弥陀寺
岩井信雄

バックナンバーを見る