今月の法話
平成15年5月
昨年、保護司を拝命した。
以来一人の少年を担当、月二回面談の日を設け、一回一時間余り、なんじゃかんじゃ四方山話を彼とする中で彼の思いが少しでも解すことができ、悩みが柔らぐことが出来れば、それから、お内佛の前で話をさせて頂きまして、佛様のお加護も頂ければとも内心考えています。
彼が今、悩みの中心になっているのは仕事のないことです。
彼は彼なりに努力をしハローワークにも足を運んでいるのですが見つからないとのこと。
一日も速く仕事を見つけて欲しいと思っています。
私も三十年以上も前、職業安定所を通じてあちこち探しましたが、これがなかなか先方とうまくいかず、安定所の係員より「君、真剣に探す気があるのか」と注意されました。
仕事を新しく見つけることは不景気風すさぶ時節。大変ですが彼には頑張って欲しいと願ってやまない。
仕事が見つからない故にやけっぱちになって欲しくない。
人間思うように行く時はご機嫌で、思うように行かないと不機嫌になり、お酒の好きな人は焼け酒、車の好きな人は暴走、犯罪傾向にある人は、ついついそちらの方へ走ってしまいます。
人は佛様ではないので日日の生活、泣いたり、笑ったり、怒ったり悲しんだり喜んだり、そんな中で暮らしています。
精神的にも肉体的にも一杯不確かなものをかかえておもいわずらっています。
法然上人はそんな日暮の中で、南無阿弥陀仏とお念佛だけは忘れずとなえて暮らしましょうとお示しです。
お念佛を称えていますと、阿弥陀如来が必ずよきようにして下さいます。
野放しの不確かさの心より、不確かな心にありながらも生かされて生きている喜びがほのぼのと感じ
られる心を必ず頂くことが出来ます。
奈良 浄土寺
藤田能宏