今月の法話
御念仏の故郷総本山知恩院にも、「風はこぶ 春の匂いに 花踊る」(16才 青木永子句)のように、良き花の香りが漂う春の季節になりました。この梅や桜の香りをかいでますと、何か花見でもしようかなと、楽しい気分になるのです。
さて、私達も香水等を付けたりしておしゃれの香りを出していますが、心の香りに気付いているでしょうか。
このことを釈迦様は、お弟子さん達に道で拾った二本のくさい縄と良き香りがする縄でお説法されたのでした。
「私たちも縄と同じように、臭い物を縛ると、縄は臭くなる様に、悪い心があれば、自然と外に現れる行動も悪くなってしまうのである。そして、みんなに嫌われ捨てられてしまう。あの善い香りがする人が持っていた布は捨てられず、木に掛けられ大切に扱われるように、私たちも心を常に見直し仏の道を修行して優しいよい心を保つことが大切ですよ」と仰せられたのでした。
さて、私たちは、どちらの香りをしているのでしょうか。
あの縄のように人に嫌がられ嫌われるような恐ろしい欲深・腹立ち・間違った判断をして文句ばっかり言う愚痴の心で染まってはいないでしょうか。
その心に元祖法然上人は、阿弥陀様の心に染まるようにとご詠歌の中で「阿弥陀仏に染むる心の色にては秋の梢の たぐいならまし」と読まれていて、お念仏を申す方は、秋に自然の恵みによって木の葉が紅葉し色づくように、私たちも阿弥陀さまの優しい香りに包まれるのであります。
このように、御念仏申し、合掌の生活をしていけば、
『ただいるだけで』 相田みつを
あなたがそこに ただいるだけで
その場の空気が あかるくなる
あなたがそこに ただいるだけで
みんなのこころが やすらぐ
そんなあなたに わたしもなりたい
と申されているように、手を合わし御念仏を申す内に阿弥陀さまの香りや徳を頂け、明るく・正しい・仲の良い生活が出来る素晴らしい周りの人に優しい心を振りまける人間に導かれるのです。
大阪 法善寺
神田眞晃