今月の法話
人生は縁
平成十八年の輝く新年をお元気に迎えられました事心よりお慶び申し上げます。
『 生かさるる 生命尊し 今朝の春 』
『親の縁によって生まれ、衆生の縁によって生かされ、佛の縁によって浄土に帰る』
と申します。
親の尊いご縁を頂戴してこの世に人として生命を頂き、多くの人々に支えられ、色んなご縁に出会い、生かされている私たちであります。
昨年は、受けねばならぬ縁とはしりつつも、辛い悲しい別れがございました。
全国津々浦々にお念仏の布教教化に回られ多くの人々を導かれた大布教師で、当会副会長でありました、京都伏見の羽田恵三上人が八月九日に世寿五十九歳でお浄土へお帰りになりました。
その早い別れが悲しくて辛く実に残念でなりません。
一昨年の夏、すい臓癌と宣告なされてからの上人は、余命半年と言われながら、追い討ちを掛けるが如く最愛の奥様に先立たれ、その悲しみの中でも、最後の最後まで泰年自若として、お念仏の法を説き続けてくださいました。
求道者として、まさに生死一如の道を行く往生人の姿でありました。
病と戦いながら昨年四月の祖山御忌大会にて「日ごろ説く 教えは全て 今日の日の 我が身の為と 思いしらるる」 「決して人様の為にお話ししたのではない。
我が道を間違えないようにと、み仏さまが、至らぬこの私に、この道を歩ませてくだされた。
このみ教えを説かせて下された。
およばずながらも、お念仏をさせていただいたればこそ、遭いたくない、この辛いご縁の中から喜びを頂戴させていただいております。」と説いてくださいました。
『露の身は露の身ながらさりながら』別れは辛い事ですが、受けねばならぬ縁は素直に受ける。
これも衆生の縁でございましょう。
遭わずにすむなら遭いたくはない『まさかの縁』なれど、何時その『まさかの縁』に出会わねばならないかも知れないのもこの世の理。
生なるものは必ず死があり、形あるものは必ず崩れていく。いかに愛しおうても必ず別れていかねば成らないのです。
だからこそ今をお念仏の中に力強く生きよとお示しくださっているのです。
お念仏は今を生きる力。
今を生きる歓び。
今を生きる安らぎです。
希望に輝く新年を素直に謙虚に、余計な理屈は言わずに、難儀もお陰と噛み締めて、お念仏の中に行き生かされる一生に致しましょう。
合掌
滋賀 善覺寺
二橋信玄