今月の法話
平成18年3月
「暑さ寒さも彼岸まで」の言葉通り、ようやく春らしくなってまいりました。
今月はお彼岸を迎えます。太陽が真西に沈む春分の日を中心に前後三日間です。
『観無量寿経』に、精神統一をして、いつでも阿弥陀様やお浄土の姿を心に思いうかべることができる修法の第一に、日想観が説かれています。
このことがお彼岸という仏教行事の始まりと深い関係があります。
沈みゆく太陽を見つめながら思いを深め、次第次第に阿弥陀さままで観ずる修法です。
けれども、このような修法のできない人のために、このお経の最後には、ただ声に出して阿弥陀さまの名を称える念仏が説かれます。
お釈迦様は、だれでも・い つでも・どこでも称えられる念仏こそが大切とされたのです。
しかしながら、沈みゆく太陽は、人生の帰結を示すとともに、未来をも指し示します。
深いしじまの中に心が落着く時でもあります。
お彼岸には、忙しい日々の中で忘れてしまう心の静寂を取りもどし、お念仏を申したいものです。
合掌
山形 稱念寺
井澤隆明