今月の法話
内外相応(真実の心)
あつい夏の日が続いております。皆様いかがお過ごしでしょうか。
蜀山人がつくった狂歌に次のようなものがあります。
庭(にわ)に水(みず) 新(あたら)し畳(だたみ) 伊(い)予(よ)簾(すだれ) すきや縮(ちぢ)みに 色(いろ)白(じろ)の髱(たぼ)(美しい女性)
昔のお大尽の夕涼み風景です。なんとも涼しそうですね
これに対して、一般庶民の夏は
西(にし)日(び)差(さ)す 九(く)尺(しゃく)二(に)間(けん)に 太(ふと)っちょの
背(せ)中(な)で子(こ)が泣(な)く 御(ま)飯(ま)が焦(こ)げつく
まあ聞いただけで汗が噴出してくるようです。両極端ですが、どちらも懐かしい日本の夏の風景です。
現代ではクーラーが何処にでもあります。文明の発達で昔のような風情がなくなりました。しかし八月は月遅れのお盆です。まだまだ日本古来の風習が残っている行事です。そしてご先祖様を家族揃ってご供養すると爽やかな気持ちになり、心の中から涼しさが広がってくるのです。
お念仏を称えるときの心の持ち方が三つあります。その第一は「至誠心」といい、真実の心の事で、元祖大師法然上人は、「内外相応」の心であるとご教示くださいました。内には阿弥陀様のお救いを信じ、外には一向にお念仏を称えることでありますが、なかなか理想どおりにはまいりません。普段の生活を省みても、私たち凡夫は自らの煩悩に心みだされ、外には善人を装い、内には悪心を起こす、まさしく「外面如菩薩 内心如夜叉」の姿そのままであることが多いのではないでしょうか。
安心してください。元祖様は次のようにお示しくださいました。
「煩悩を断ち切ることはできません。そのままでお念仏を称えなさい。阿弥陀様はそんな私たちをこそ救ってくださるのです。」
「お念仏の功徳は外翻内蓄といい、外を翻して内に蓄えられます。とにかくお念仏を称えましょう。そして私達は内翻外播といい、内を翻して外につまびらかにする。煩悩を持った悪人であると自覚し、正しい懺悔をする事が大切です。」
お念仏を称えると阿弥陀様が心の中にいらっしゃってくださると感じられるようになり、心が安らかになります。これが文字通りの安心(あんじん)です。
暑い夏 家族揃って お念仏
心の中に 爽やかエアコン
東京 念佛院
中野隆英