今月の法話
平成19年9月
「迎えの船」に乗られた若奥様
法然上人『黒谷和讃』に「老いも若きも妻も子もおくれ先だつ世の習い」の一節がありますが、このたび、改めて実感されられました。
それは、私の知り合いのお寺の若奥様が、小学五年の男の子を頭に、小学三年、二年の女の子、三人の子供を残しての訃報を受けたからです。
遺影は、一年少し前、末っ子の入学式に、無理を押して入院先より駆けつけて記念写真を撮ったものだそうで、かすかにほほえんでおられるお顔を見るにつけ、また、お焼香に出られる小学校関係の多数の親子連れを見るにつけ、涙を止めることができませんでした。
お寺に嫁ぎ、五重相伝も受けられたので、「南無阿弥陀仏」とお念仏を称えながらの往生であったことと思いますが、どんなにか辛い別れであったことでしょう。
葬儀中にふと思い出したのは、数年前、三河のお寺さんへ布教に伺ったときのことです。こちらの若奥様のお墓に、次のような歌が刻まれていました。
病んで後
迎えの船に乗る身には
阿弥陀の国の楽し思いを
法然上人のみ教えを、しっかりと受けとめて、お浄土へ往かれたこの奥様の歌を、今葬儀中の若奥様に重ね合わせて、ただただお念仏を称えさせていただきました。
富山 医王寺
泉 清孝