今月の法話

平成20年8月

大切な宝物

--母が残してくれたもの--
 
 近所の毅さん家でお母さんの葬儀があった一週間後、兄弟が慌ただしく出入りし、裏の空き地で大きく火が燃え上がっているのを目にした。「何をしているのだろう_ _。」気にはなったがそのままその場を離れた。しばらくして、お母さんの満中陰法要の時、ようやくその意味がわかった。『おしょうさんなぁ。母がまだ入院している時、私にこんなことを云ったんや。毅、私が死んだら家の中を探してごらん。宝物がおまえたちの為に残してあるよ。』しばらくして、母のこの言葉を思い出し、初七日を迎えた時に兄弟で話し合った。兄弟それぞれが“宝物”とは、「きっと父が母と結婚する時に贈ったダイヤモンドではないか?」ということになった。そこで兄弟六人手分けをして家の中、隅から隅まで探し、いらないものはすべて燃やした。しかしながら、結局母の残してくれた“宝物”は見つけることができなかった。その時、兄弟全員が‘だまされた’と思ったが、よくよく考えてみると、母の“宝物”とは、いがみあうことなく、兄弟仲良く手を合わせ、助け合い感謝の心でお念仏し、再びお浄土で再会したいと言う母の想いだと気付かされた。と話してくれた。そんな毅さんもまもなく七回忌を迎える。
                                   
                                              

合掌

鳥取 願行寺
黒川信行

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