今月の法話
平成20年10月
苦あって楽あり
聖号十念
秋の彼岸も終わり、「生きでいるだけが精一杯」の酷暑から解放され、一息つける季節になってきました、仏教では、ほとんどの宗派がこの酷暑の時期に盆施餓鬼法要をお勤めしています。
私の自坊では、毎年八月十五日に勤めておりますが、昨年の八月十五日は最高気温四〇・九度となりました、施餓鬼法要は、本堂正面外の浜縁に餓鬼の供養檀を設け、本堂正面の引戸は全開して、本尊様の阿弥陀如来を背にしてのお勤めとなります従って、本堂前の境内の様子が法要中見えるのですが、この灼熱の炎天下、参道の坂を、八十路を越えた檀家さん達が傘をさし、杖をついて、遅々とした足取りで本堂へと向かってみえる。無事に本堂まで辿り着かれて安堵となったのですが、温暖化の為の酷暑がまだ続くであろうことを考えるとお施餓鬼法要の日を前倒ししなくてはと思っておりました。
しかし、お釈迦様が、「この世は娑婆(苦しみが多く、忍耐すべき世界)とお説きくだきっている事に気付きました。人生には苦が有って楽を感ずる、苦が無ければ楽を感ずることが出来ない。
正に今日の世相であります。暑い涼しい、寒い暖かい、病気元気、貧しい豊か、両方を感じて、有り難さが分かるのです。きっと暑い中にお参りいただいた檀家さんもその夜、お仏壇の前で「暑い中、今年も無事にお施餓鬼にお参りして来ましたよと、満足感をもって御先祖様に、只一向にお念仏を称えられていることを想い、従来通りの日程でよいのだと確惟したことです。
合掌十念
岐阜 安楽寺
澤 玄浄