今月の法話

平成21年1月

絵に書いた鏡餅?(理想と現実)

 新年明けましておめでとうございます。今年一年も無事、家族元気に過せますように。健康が一番。と、そのような幸せを願う人も多いことでしょう。
 健康とは、「身体も、精神も、そして社会においても良好であること」とありました。しかし、健康を自慢としていた人でも、健診によって身体に何らかの医学的な所見が見つかる場合があります。また、精神的な心の問題や家族、夫婦間、更には職場での人間関係など、社会的な不安も含めると、この時代、果たしてどれだけの人が「健康です」と胸を張って言えるのでしょうか?誰でも何らかの悩みや不安を抱えているものなのです。つまり、これは人間が望むところの三拍子揃った理想としての健康観に思えてならないのです。
 法然上人も、理想と現実に悩まれたお一人でありました。仏道者の理想、つまり、三学(戒-戒律を守り、定-心を静め、慧-智慧を究める)に真摯に取り組まれたお方であります。しかしながら、「凡夫の心は物にしたがいて、うつりやすし」と嘆かれ、「我等ごときは、すでに戒定慧の三学の器にあらず」と現実の我が身に深く悩まれたのでありました。
 いくら立派なみ教えがあっても、それを修することが出来なければ、絵に書いた餅、理想に過ぎないのであります。「我が心に相応する法門」、「我が身に堪えたる修行」として辿り着かれたのが阿弥陀様の本願にお約束の、南無阿弥陀仏とお称えするお念仏でありました。人間の本質を見透かして、阿弥陀様がご用意なされた、誰でもが修することができるお念仏のみ教えであります。
 理想的な健康を得る人は決して多くないでしょう。また、理想的な仏道を実践できる人もおよそ不可能に近いことであります。理想ばかりを追い求める人が多いこの現代において、今一度自らの足元をしっかり見つめることが大切なのではないでしょうか。この私を救って下さる仏様、この私が救いに預かるみ教え、阿弥陀様のみ名をお称えするお念仏以外にございません。
 健康と言う幸せもやがて壊れていくものです。不確かな、一時(この世のみ)の幸せは、本当の幸せとは言えないでしょう。人生は思うままにならないこの苦の世界を離れ、身も心も安楽なる、いわば理想的な世界(極楽浄土)に往き生まれさせていただくことこそ本当の幸せなのであります。これから先、苦しみや悲しみにある私を導き、そしていかなる縁でこの世に別れを告げることがあろうとも、必ず阿弥陀様がこの私のお念仏の声に応えて、極楽浄土へ迎えて下さるのであります。この世も後の世も、この二世絶対安楽なるお念仏のみ教えこそ、すべての人々を幸せにすることができるのです。
 理想の世界を目指し、現実に生きる我々は、阿弥陀様の御救いを信じお念仏を申すことが大切です。本年も正しい信仰に生きたいと思います。

滋賀 西福寺
稲岡純史

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