今月の法話

平成21年8月

お念仏のみ教え

 中国における五世紀後半から六世紀前半にかけての浄土教者で、法然上人が、浄土五祖の第一に選ばれておられる曇鸞(どんらん)というお方がおいでです。
 その曇鸞大師、お経を注釈する最中に病に倒れ、その病は治ったのですが、「仏教を学んでいく途中にして命が終わることは誠に残念でならない」と、長寿を得る方法を道教(どうきょう)の師に学び、『仙経(せんきょう)』というお経を授かりました。得意満面で郷里に帰り、菩提流支三蔵(ぼだいるしさんぞう)というお方に出会われました。
 しかし、菩提流支三蔵に、「仏法の中に『仙経』に勝る長生不死の教えはあるや」とおたずねになられたら、菩提流支三蔵は地に唾して、「言語道断、たとえ長生きをしても、所詮三界を流転するにすぎないではないか。『無量寿』こそが本当の永遠の命である」と諭され、『観無量寿経』を授けられたと伝記にございます。
 そして、この『観無量寿経』の最後にある、「汝、この語をたもて。この語をたもてとは、すなわち無量寿仏のみ名をたもてとなり」とのご文に触れられるや、たちまちにお念仏のみ教えに帰入されたのでございます。
救いを求める人と、それを導く人があってみ教えは生きていきます。
 今、私たちは往生浄土を目指し、その方途であるお念仏のみ教えをお弘め頂いた法然上人に導かれて、日々を過ごさせて頂くことが、生かされる道でありましょう。
                                     

合掌

兵庫 常楽寺
浦上博隆

バックナンバーを見る