今月の法話

平成22年4月

細やかな実践

 桜咲く4月はお念仏の総本山知恩院で法然上人の御忌の法要が勤められます。平たく言うと、法然上人のご法事(七九九回忌)が勤まるのです。
 私のお寺でも檀家さんのご法事を勤めさせていただくわけですが、その際に試みております細やかな実践を紹介させていただきます。

 先ず、参詣者の皆様に対してご法事の意義と心構えをお話ししてから、「追善供養和讃」を配布して、一番から三番まで簡明に解説の後、おもむろに仏前に転向して、ゆっくり真心を込めてお唱えしてから読経を始めます。読経終了後、再び参詣者の方に向き直って、法然上人の教えをわかりやすく説くために「川柳」を引用をさせていただいています。その中で好評なものをご紹介申し上げますと。

「明日よりも 今日を大事に 生きてます」

 一日一日を大事に一生懸命生きておられる感謝の気持ちが素直に表わされています。仏様に生かされて頂いているという頭の下がる句ではないでしょうか。

「顔洗う ついでに 心洗えたら」

 起床後に洗顔の習慣は誰にでもあるでしょう。顔の脂や汚れは洗顔フォームで洗い流すことは出来ますが、「心の垢」まで落とすことはできません。あくまでもご本人の反省と自覚を待つしかありません。「愚者の自覚を」の言葉を本当に表す句ですね。

「お悔やみ欄 先ず年令を見て 俺はまだ」

 毎朝の新聞で紹介されているお悔やみ欄を見て、自分はまだまだ大丈夫だと思いたがる人間の心理が滑稽に表現されているようです、気がつけば私たちはこのような気持ちをフッと持つのではないでしょうか。用心しなければなりません。

 ご法事、このような一時を持てることに感謝、生きていることにも感謝、この感謝の気持ちを持てることが阿弥陀様の願いであると感じることが細やかな私の喜びでも有ります。

                                 合掌

新潟 光明寺
鈴木光徹

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