今月の法話

平成22年6月

薫風随想

 昔は、若鮎おどる季節、6月を迎えると、各お寺では冬物をなおし夏物に衣替えを必ず行ったが、最近では野菜も着るものも1年を通じ手に入れることが出来、季節に対し敏感に反応しなくなった様に思われる。
 「衣を染めんよりも心を染めよ」
又、
 「頭剃るより心を剃れ」
と、形ばかり僧侶になっても心に道心がなければなんにもならぬ。形式より精神が大事である。
 今から約840年の昔、「全ての人間は、南無阿弥陀仏と唱えたら阿弥陀様のお慈悲により、極楽世界に往生させて頂くことが出来る」と、ご教導頂いた法然上人のお歌に

 「かくばかり、染めばやなこころのうちを黒染に、衣の色はとにもかくにも」  と。

 価値観の多様化からか、お金欲しさに人を危めるといった行為が、日常茶飯事に報道関係を通して目に飛び込んでくる。心の渇きが原因で仏神・先祖への恭順が萎え、葬儀の粗雑化、蔡祀の粗暴化等、精神的廃退が目立つにように思われる。以上のことからも社会的連帯感が希薄になっているようにも思われる。最後に遠くの親戚よりも近くの他人という言葉を噛み締めて念仏の日暮しを送りたいものだ。

合掌

京都 因性寺
武田和清

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