今月の法話
平成23年4月
到達点
3月11日に発生致しました「東日本大震災」で被災されました皆様、ご家族様、関係者の皆様に心よりお見舞い申し上げます。又、亡くなられました方々にはご冥福をお祈り申し上げます。更に、一日も早い復興を祈念申し上げます。
太平洋戦争の末期(昭和20年の初夏)、わが町にも、アメリカ空軍による空襲があり、私たちは、息をひそめて、寺の境内にある防空壕に避難していました。その時のことです。
アメリカ空軍の落した爆弾が大きな音とともに、寺の近くの駅の北側に落ちました。
避難していた防空壕は大きくゆれ、土砂がふりそそいできました。
「もう、これでおしまいか?」
「死ぬのか?」
と思った時です。暗闇(クラヤミ)の中から、
「ナムアミダブツ」「ナムアミダブツ」
「・・・・・・・」
の声を聞きました。父の声です。
その声を耳にして、我にかえった私も、思わず「ナムアミダブツ」が口から出ました。
父は幼少の頃から、小僧として、寺に入り、修行を重ねて、住職になった人です。
いつでも、どこでも、「ナムアミダブツ」が出る人でした。
私も父が往生した時の年令になりましたが、残念ながら父のように常念仏の「ナムアミダブツ」を行住坐臥にお称えできる領域には到達出来ていません。
歩いている時も、家にいる時も、座っている時も、横になっている時でも、いつでも、どんな時でも「ナムアミダブツ」と阿弥陀様の御名が私の口から出る様になりたく思っています。
阿弥陀様にすがり、命終の時まで常念仏を称えることが出来るようになるのが私の最後の修行です。
和歌山 専念寺
中西恭雄