今月の法話

平成23年6月

お念仏の味わい

 お念仏ねんぶつは日常的にとなえるものですが、時には普段の生活から離れ、じっくりと腰をすえて精進しょうじんすることも大切です。特別に期日と場所をもうけ、もっぱらお念仏をつとめることを「別時念仏べつじねんぶつ」といいます。
法然上人ほうねんしょうにんは「ときどき別時の念仏を修して、心をも身をもはげまし調ととえすすむべきなり」とおおせられました。日常の生活におわれ、ゆるみがちになる私たちの信心しんじん修行しゅぎょうに励むようにするためのお言葉です。お念仏の尊さとよろこびを実感し、日々のお念仏をいきいきととなえられるようにするためにも、別時念仏のごえんを大切にしていきたいものです。
 ことし四月下旬、東日本大震災の四十九日目に、知恩院ちおんいん阿弥陀堂あみだどうで夕方六時から三時間にわたって、災害で犠牲となられた方々の追悼別時念仏会ついとうべつじねんぶつえがありました。阿弥陀さまの前には、数多くのろうそくがともされ、おごそかな雰囲気のなか、木魚もくぎょおととお念仏の声があふれました。僧侶そうりょはもちろんのこと一般の人にまじって、数十人の高校生もおりました。誰もが犠牲者を悲しみ、称えずにはおれない真剣なお念仏でした。その念仏者ねんぶつしゃの尊い姿が、「すべての者をかならすくうぞ」という阿弥陀さまの大きなお慈悲じひつつまれていることを感じ、私も南無阿弥陀仏の一声一声ひとこえひとこえをしみじみとありがたくとなえました。
 もちろんこの別時念仏会べつじねんぶつえに限ったことではありません。お念仏はただひたすらにつとめていくなかに、その味わいを深めていくことができるものです。
                                      

合掌

佐賀 円福寺
黒谷真了

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