今月の法話

平成24年9月

以前私がインドを訪れた時、案内をしてくれた現地のガイドが、こんな話をしてくれました。
「日本では、子供に人に迷惑をかけてはいけないと教えるそうだが、インドでは私達はまわりに迷惑をかけて生きている。だからその迷惑をかけているもの達に報いるような生き方をしなさいと教えられた。」と言うのです。

  考えてみますと「迷惑をかけてはいけない」と教えるのは、今現在、何も迷惑をかけていないと言う、思いあがり、「迷惑をかけているから報いる生き方を」と教えるのは、自らを見つめ、過去を内省する中での生活があるように感じます。

  最近では、我が子がどんなに騒いでいても、注意もせず放ったらかしの親も多く目にし、そんな親の無責任な姿が、今日のいじめ問題や身勝手な犯罪に大きな影響を及ぼしているように感じてしまいます。 お釈迦様は、自らを見つめ、まわりの全ての人々に感謝と報恩の心で、二世(この世、そして後の世)かけての幸せを求めて生きて行くようにとお勧め下さいました。
しかし実際、私達は「我」を押し通し、自分の都合で良し悪しの判断をしてしまっている、自分が迷惑をかけている事に反省どころか、気づくことさえ出来ぬ私達であります。

  法然上人は、そのような私達が、二世を通して幸せになる事のできる道を、命をかけてお探し下さいました。 その道こそ口に「南無阿弥陀仏」とお称えさせて頂く道であります。
このお念佛の日暮らしは、自分勝手なわがままな心が抑えられ、まわりの多くのおかげを感じられる心を育み、この世、そして後の世かけて幸せに生きる道を間違いないものとして下さるのです。

合掌

北海道第二 慈教寺
嶋中三雄

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