今月の法話

平成25年4月

共に生きる

  ある時「葬儀の後、七日七日の中陰を毎週勤めなくてもすぐ満中陰でいいのでは?」と聞かれたことがありました。確かに共働きのご家庭も多い時代、大変なことでしょうが、しかし、仏教では「満中陰までの間は、極楽の蓮の中に生まれ閉じている間なのです。亡き方が、極楽往生し蓮の花を咲かすお念仏を申す追善回向を行う事は、重要なことです。」という浄土宗での考え方をお伝えするしかない。
  叉、京都大学のカール・ベッカー教授が「身近な方を亡くした場合、残された方の半年以内に事故、病気の可能性が非常に高い。」と言われているので、心を癒すことの出来る中陰のような御念仏の生活は必要なのだと確信致します。
 そして、欧米では日本の中陰のような仏事の習慣がなく、日本の葬儀以降の仏事に着目をしてアメリカでの終末医療に取り入れられた。末期患者が亡くなる前から家族と一緒に集まり定期的にパーティーをし、患者が亡くなっても家族だけ定期的に集まりパーティーをすると、その結果、残された家族の事故・病気の可能性が顕著に下がった。
  このように、追善回向とは御念仏の功徳を振り向けることであるが、もう1つ故人を懐古し生き様を自分に活かすということ。親しい人が集まり故人を懐かしく思い出し、話をすることによって残された自分自身の心の整理が徐々にできていく。
  日本に住む私達が、当たり前のように亡くなった後、中陰・百ヶ日・初盆と亡き方の為を想ってつとめる念仏回向が、我が身の往生極楽の為のお念仏ともなり、今生の我が身をも健康に保つ日暮しにつながる古来よりの仏事習慣だと気付かされる。
 先立つ方の往生と、今に生きる私達が健康に「共に生きる」為にも、お念仏に精進させていただこう。

合掌

広島 極楽寺
井上晋弥

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