今月の法話

平成26年6月

お念仏の傘

「五月雨をあつめて早し最上川」
 有名な芭蕉の句が思い出されるほど、雨天の多い時候になりました。
この梅雨時期、お出かけする予定があればあくる日の天気予報が気になります。
予報では降水確率が出ます。ゼロパーセントなら降らないし、百パーセントなら必ず雨
が降る。
 その確率を見て、人は何パーセントの時に傘を持って出ると思われますか。統計的に言うと、五十パーセントの時、傘を持って出る人が一番多いそうです。つまり、降るか降らないか全くわからない場合に多くの人が傘を持つ、天候はどう変化するかわかりません。
たとえば電車のホームに立ち、まわりの殆どが傘を持っていて、自分がなかったら、
後悔の思いで一杯になることでしょう。
  私たちの人生にも同じことが言えます。「南無阿弥陀仏」とお念仏にすがることは、
用心の傘を一本持って出るのと同じことです。私たちの日暮らしも楽しいことばかりは
続きません。どちらかといえば苦しいこと、悲しいこと、辛いことの方が多い日々です。
シトシトと降る雨のような、ザーザーと降り続ける長雨のような感じで、毎日の生活に
降りかかってきます。そんな時にお念仏の信心、お念仏の傘一本持っていたなら、どれほど心丈夫なことでしょうか。

  衆生、仏を礼すれば仏これを見たもう
  衆生、仏を称うれば仏これを聞きたもう
  衆生、仏を念ずれば仏も衆生を念じたもう


  これは、法然上人が阿弥陀さまと同じように尊崇された善導大師のお言葉です。
  私達がみ仏さまに心を向けて、手を合わせて拝み、口に「南無阿弥陀仏」とお念仏を
申したならば、雨の日に、濡れずに過ごせるように、阿弥陀さまがこの私を守り、導き、お育てを下さるのです。
 私達は、明日、どのようなご縁をいただくかわかりません。確率はまさに五十パーセントです。混沌たる現代社会を生き抜くために、お念仏を数多く申し、阿弥陀さまを頼む日々を過ごさせていただきましょう。

合掌

京都 大善寺
羽田龍也

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