今月の法話

平成27年5月

浄土へのあこがれ

今年は、徳川家康公の400回忌に当たるそうです。私たち浄土宗は徳川家とご縁が深く、知恩院でも先月、法然上人御忌大会に合わせ、厳かにその法要が営まれました。家康公が戦の時に「厭離穢土(えんりえど)欣求浄土(ごんぐじょうど)」の旗を掲げたことはよく知られています。戦乱の「穢土」を嫌い、戦のない平和な世を「浄土」にたとえて憧(あこが)れたのでしょう。また、晩年は毎日お念仏に励んだと伝えられています。
  ところで、今の私たちはどんな憧れ(あるいは望み)を抱いて生きているのでしょうか。 お金、名誉、健康、そして幸せな老後などなど。しかし、それらはみな生きている間だけのことで、その先はと問われたら、寂しいことに何も見えません。ただむなしく不安さえ覚えてきます。これが仏教でいう生死の憂い、つまり「迷い」といわれるものです。
  法然上人は、阿弥陀様の本願(お誓い)を信じ、お念仏を唱えるだけで、やがて誰もが憧れるような安楽の国、浄土(極楽)に救われると教えてくださいました。私たちはみな煩悩具足の凡夫。迷い不安は常にあります。しかし、この教えをいただき、極楽浄土への「憧れ」を抱いて日々お念仏に励むことで、それは自ずと取り除かれるのではないでしょうか。二度とない人生、先々はみ仏にお任せして安心し、楽しく過ごしたいものです。
  『阿弥陀仏と 十声(とこえ)唱えてまどろまむ 永き眠りに なりもこそすれ』
  法然上人のこのお歌からは、そのような確かな思いが伝わってまいります。ともどもにお念仏に励みましょう。
                                      

合掌
                           

栃木 法蔵寺
長田善生

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