今月の法話

平成28年6月

「わが身の人となりて 往生を願い念仏することはひとえにわが父母の養いたてたればこそあれ」

法然上人の御法語であります。
 「私達が、人間として生まれ大きく育てて頂き、極楽へ生まれたい(往生)と願いをおこし、御念仏申す信仰の道に入れたのも、すべて両親の御恩です」と申されています。
 今年の、総本山知恩院御忌大会に於いて、私が唱讃導師を拝命し、皆様のご恩にて無事成満させていただけたことも、師僧が四十九年前に唱讃導師を勤められたその姿を拝んでいたからです。それは、私が中学生の時でした。師僧が、高座で焼香された時の香煙が、紫雲たなびく奇瑞に拝め、お念仏の感動で胸が一杯になりました。その時のお念仏の感動を此の度は檀信徒の皆様に「おてつぎ」したいものと願い、至心に勤めさせていただきました。おかげさまで、生身の法然上人とお出会い出来、お念仏の感動を檀信徒様方と有することが出来たのです。
 このようなお育ては、「親が拝めば、子も拝む、拝む姿の美しさ」と、ご家庭の両親の姿からも導き育まれるものです。
 ある日、私が、信徒さん宅にお参りさせて頂くと、なんとお仏壇に、小学校の娘さんの通信簿が供えられていたのです。私は、「お母さんが、供えたのですか」と聞きますと、「娘が、先祖様や阿弥陀様に見て頂こうと自発的に行ったことです」と言われたのです。
 前の句のように、親の拝む姿によって、優しい心、素直な心をもった素晴らしいお子様に育たれたのです。
 このご家庭こそが、生きた阿弥陀様を拝み、素晴らしいお念仏信仰の生活をなされることで、明るく正しく仲の良い、安らぎある幸せな生活をいただけるのだと思います。
                                          

合掌
                              

大阪 法善寺
神田眞晃

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