今月の法話
平成29年2月
精進
今から2500年前、仏教を開かれたお釈迦さまの元には沢山のお弟子がいらっしゃいました。そんな仏弟子の一人、シュリハンドクは生来もの覚えが悪く、ほんの短いお経でも憶えることが出来ません。途方に暮れるシュリハンドクにお釈迦さまは一本の箒を手渡して仰いました。「塵(ちり)を払え、垢(あか)を除け、と称えながら一生懸命に掃除をしなさい。」それから毎日掃除に励んだシュリハンドクは、遂に払うべきは心にまとわりつく煩悩であることに気付き、覚りを得たと言われています。
時は移り今から約850年前、元祖法然上人が浄土宗を開かれました。心から往生を願って南無阿弥陀仏と称えるならば、誰でも救われるという浄土宗のお念仏は、燎原の火の如く広まっていきました。その中で法然上人は次の様なお言葉を残しておられます。「一回のお念仏で救われると信じつつも、お念仏は一生涯にわたって励みなさい。」誰でも出来るお念仏ではありますが、相続していくことが何より大切であるとお示しなのです。
精進とは、大変な決意をもって修行に邁進するという意味の仏教語です。シュリハンドクは掃除に励んで覚りを得ました。法然上人はお念仏を相続することで往生が叶うと説かれました。この二つに共通しているのは、自分が出来る事を地道に続けていくことが大切であるという精進の教えです。それは普段の生活でも同じことが言えます。自分のなすべきことをコツコツと続け、最後までやりきる努力が何にとっても大切なのです。日々、お念仏に励みましょう。
合掌
京都 安養寺
喜早信定