今月の法話
平成29年3月
浄土の楽しみ
長くご病気を患われていた方がお亡くなりになりますと、「○○さん、良かったね、これで楽になれるね。」とお別れの言葉を申すことがございます。なぜなら生老病死の苦しみのない世界が極楽であるからです。この世は苦しみの世界であるから、お念仏をお称えして苦しみのない極楽浄土に往生させて頂くことは喜びであるはずなのですが、やはり家族や友人との別れは辛く悲しいものです。
けれど私たちの目には見えないだけで、亡くなられた方々がこの世に帰ってきて私たちを守り導いてくれているとしたらどうでしょうか。
法然上人のお言葉に「先に生まれて、後を導かん、引接縁は、これ浄土の楽しみなり。」というお言葉がございます。 極楽浄土にはこの世に残してきた縁のある人を導くという「引接(いんじょう)縁(えん)」があるのですが、法然上人はこの「引接縁」こそが、浄土の楽しみだとおっしゃったのです。
亡くなってもう会えないと思っていたあの人が、実は皆さんを導く菩薩様としてお側にいらっしゃるのです。ニコニコと優しい笑顔で皆さんをお守り下さっているのです。
お念仏をお称えする私たちは「死んだら終(しま)い。」ではないのです。まだまだやることがあるのです。私たちが今まさにご往生なさった方々から守り導かれているのなら、私たちもまた極楽浄土に往生させて頂き、この世に残していかねばならない大事な家族や友人を守り導こうではありませんか。そのためにもお念仏をお称えすることが大切なのであります。
南無阿弥陀仏
大阪 浄念寺
坂下雅裕